第199章

江口己龍は正直、言葉を失っていた。野呂栞とは一度やり合って、負けている。

そこに白井小鳥まで加わったら、勝ち目なんてあるはずがない。

ときどき江口己龍は思う。野呂栞は本当に女なのか、と。男より殴れる女がどこにいる。殴れるだけじゃない、打たれても平然と立っている。

兄弟たちの前で負けでもしたら——面子が丸つぶれだ。

江口己龍が望んでいたのは、島宮奈々未とのタイマンだけ。野呂栞と戦うつもりなんて、最初からなかった。

「どうしたの? 怖気づいた?」島宮奈々未が口元を吊り上げる。「さっきのは冗談よ。みんな身内でしょう? 殴り合ってどうすんの。和気あいあいが一番、稼ぐにもね。ほら、さっきので...

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